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東京高等裁判所 昭和36年(く)142号 決定

(その一) 少年 S(昭一八・八・二〇生)

(その二) 少年 M(昭一八・一・二七生)

主文

各原決定を取り消す。

本件をいずれも東京家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件各抗告の理由は、少年Sについては附添人弁護士大川元三、竹沢哲夫連名名義の抗告趣意書に、少年Mについては附添人弁護士小倉俊夫名義の抗告趣意補充書に、それぞれ記載してあるとおりであるから、いずれもここにこれを引用する。

よつて按ずるに、少年両名及びY子の各少年保護事件記録並びに少年調査記録によると、少年両名の経歴、素行、家庭内外の環境、友人関係等はいずれも各原決定の摘示するとおりであることが認められるから、少年らを一定期間施設に収容するのが適当であるとして各原決定が少年らを中等少年院に送致する旨の決定をなしたのは、強ち著しく不当であるとは認められないが、当審において事実の取調をなした結果によると、右少年両名の父は従来の指導、監督の方法の誤りを痛感し、将来少年が再び非行をくりかえさないように努力することは勿論、それぞれ一家を挙げて少年の善導、訓育に尽す旨を約しておるし、又少年らもその性未だ本来の悪に染浸されたものともいえないし、かつ衷心から改悛の情を顕わしていることも窺えるので、この際少年らを少年院に送致するより、少年の補導、訓育に慈愛と熱意をこめ全力を傾注する旨その覚悟を新たにしている両親の下に帰し、一定の保護観察に服し、反省、自重し、更生の生活をなさしめるのが、この際少年両名のため最も適切、妥当な措置と認められる。のみならず前記各記録に徴すると、少年両名はY子とT子を強姦せんことを共謀したこと、その結果右少年両名は同女を強姦したことはこれを十分に認めることができるが、右少年両名に強姦致傷の責を負わすに足るべき事実を認めるにはいささか疑問なしとしない。結局各抗告はその理由があることになるので、少年法第三十三条第二項により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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